「尊敬するのは母。初めて父を逆転」という話題をテレビで見ました。
博報堂の調査で、父親と母親それぞれを「尊敬する人」「友だちのような人」「どうでもいい人」のどれに当てはまるか聞いたところ、「尊敬する人」と答えた割合は、父親より母親の方が高かったそうです。
なぜ、そんな結果になったのか考えながら、これからの育児のあり方について考えてみました。
子どもから見た母親と父親
子どもから見て、母親は身近な存在です。一番、自分のお世話をしてくれる人。
逆に、父親は何をしているかわからないんですよね。家族のために一生懸命働いてくれている。それは確か。本来なら、父親が仕事をしている姿なんていうのはかっこよくて尊敬できるものなんですが、見えない。
尊敬できるほど、父親のことを理解していない状態なんだと思います。自分が働くようになって初めて、父親の偉大さがわかったという人もいるくらいです。
しかも、最近はワーキングマザーが増えているため、母親は外で働きながら、家事や育児もしています。外で働くだけの父親と比べて、やっていることが多く見えます。
実際には、勤務時間や役職、仕事内容など、会社仕事の大変さだけでいったら父親の方が大変な場合もあるでしょう。でも、子どもには見えないんですよね。
「外で働いてきて、なおかつ家ではバタバタしながらも笑顔で家事をこなす母親」
なんか素敵に見えちゃいますよね。
ただ、尊敬していないからどうでもいいわけではなく、父親は友達感覚になっている人が多いんだとか。遊ぶときにはがっつり遊んでくれる父親が増えてきているのかもしれませんね。
父親と母親、どちらが上という話ではない
この調査で私が疑問に感じたのは、「お母さんがお父さんを上回ることに意味があるのか」。
これって、父親と母親それぞれを「尊敬する人」「友だちのような人」「どうでもいい人」に分けているだけであって、「父親と母親どちらを尊敬していますか」という話ではないのです。
数値も僅差。母親が68.1%に対して父親は61.5%。調査対象は800人なので、母親を尊敬する人と答えた人は545人、父親を尊敬する人と答えた人も492人もいるってことです。
しかも、たしかに母親は年々「尊敬する人」と答える割合が増えていますが、父親は横ばい。別に尊敬しなくなってきているわけではないのです。
母親を尊敬する割合が父親を上回った。それは今の時代の流れを表しているだけ。昔は父親が一家の大黒柱で、ドーンっと構えて、母親も一歩下がっていましたが、今は違うってことですよね。別にどっちが偉いとか、どっちがすごいってことじゃない。
街頭インタビューではパパさんたち、みんなショック受けてましたが、ショック受ける必要ないんじゃないかなぁ。別に「パパよりママの方を尊敬している」って言っているわけでもないです。そういう人も中にはいるという結果だけれど。53人はそうだろうけれど。
同じような質問に「パパとママ、どっちが好き?」なんてのがありますよね。
どちらを選んでも子どもにとっては負担だし、パパとママにもさしてメリットはありません。そのときはもしかしたら選ばれてうれしいかもしれないですが、まぁ子どもに社交辞令言わせた感が満載ですよね。
それと同じくらい、「どっちを尊敬しているのか」という質問は無駄な気がします。
そもそも両親って尊敬しないといけないの?
なんとなーく「親は尊敬しないといけない」気がしますよね。でも、なぜでしょう。
私は両親のことを尊敬しています。それは多分、理想モデルとして両親を見ているから。
子どもはやっぱり、親の背中を見て育ちます。自分が働いたり、家事をしたり、子育てしたりするときに、お手本にするのは今まで見てきた両親の姿なんですよね。別に同じ人生歩みたいわけでも、めっちゃ憧れてるわけでもないんですけど、人生の基本型が親って感じ。
それまでもずっと尊敬はしていたものの、自分が同じ立場になるとなおさら「うちの親ってすごかったんだなぁ」って実感して、本当に尊敬と感謝の気持ちでいっぱいになってきます。
尊敬って、感謝や信頼とセットなんですよね。だから育ててくれた親には自然と感じやすいものなんだと思います。
辞書を開いてみると尊敬とは、「その人の人格を尊いものだと感じて敬うこと」とあります。相手が唯一無二の存在であり、価値のある人間だと認めることです。
親は自分にとって唯一無二の存在であり、価値あるもの。親子関係がうまくいっていれば、そう思えるのではないでしょうか。だから親は「尊敬しなければならない」というよりは、「自然と尊敬してしまう」。
先のアンケートで「友だちのような人」と答えた人も、尊敬の気持ちがないわけじゃない。親を敬う気持ちよりも親しみの方が勝っただけなのだと思うのです。
子どもが親を信頼していることが一番大事
尊敬、感謝、信頼はセットですが、親子関係で一番大事なのは「信頼」です。
「友だちのような人」っていうのも、根底に信頼関係はありますよね。だったらOK。「どうでもいい人」って答えた人は……信頼関係の構築が必要そうですね。
親を信頼していると子どもはうまく甘え、自立していくことができます。ありのままの自分を受け止めてくれると信じ、困ったときに頼れる人がいれば、自己肯定感も育っていきます。
親を信頼し、自己肯定感がきちんと育った子どもは、自然と感謝と尊敬の気持ちを持つようになるでしょう。きっと親だけではなく、自分の周りのすべてのものに対して。それはとても幸せな生き方だと思うのです。
子どもに信頼してもらうためにはどうしたらいいのか。そこを考えれば、自分がどんな姿を子どもに見せていけばいいのかわかります。
もう一つポイントは、パパへの信頼も育ててあげること。”信頼しているママ”が「パパは一生懸命、お外で働いてきてくれるんだよ」と言えば、子どもに響きます。逆に「ママだって忙しいのに、パパったら」なんて言おうものなら、パパの評価はガタ落ちです。
父親も母親もバランスよく信頼してもらう。いざというとき、両方を頼れるように。それが、子どもに敬ってもらうよりも前に大事なことなのです。